「誰かのため」から、「なぜか描きたい」へ。
幼いころから、手を動かすことが日常にありました。
形にすること、整えること、伝えること。
気がつけば、その延長線でデザインの世界に進んでいました。
桑沢デザイン研究所では「見せるための美しさ」を、
中央大学では「社会の仕組み」を学び、
広告代理店での5年間は、伝える技術を徹底的に磨いた時間でした。
誰かの言葉を代弁し、誰かの想いを結果に変える日々。
その中で、「これは本当に自分の表現なのか?」という疑問が
少しずつ大きくなっていきました。
そこから10年続けたアクセサリー制作。
感性とブランディングを融合し、世界観を築くことはできたけれど、
「誰かのため」に成り立つ美しさに、
いつしか息苦しさを覚えていました。
だからこそ、筆をとりました。
“誰かに向けて”ではなく、
“自分の内側から”生まれるかたちを確かめたかった。
最初の絵を描いたとき、
体の奥から何かが還ってくるような感覚がありました。
これまでの経験がひとつの線で結ばれた瞬間でした。
描くことは、考えること。
そして、生きてきたすべてを受け入れていくこと。
光と影、静けさと喧騒、始まりと終わり。
相反するもののあいだ——“あわい”に、自分の輪郭を見つけていきます。
今の作品は、
誰かに届くことを願いながらも、
誰のためにも従わない、自由なかたちをしています。
描くことは、生きること。
過去を抱えながら、新しい自分へと向かう日々の証です。